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ウイルス性疾患について
ウイルス性疾患は、様々な種類のウイルスが原因となって引き起こされる皮膚や粘膜の疾患です。これらの疾患は、ウイルスの種類や感染部位によって症状や経過が大きく異なります。一般的に、ウイルス性疾患は非常に感染力が強く、直接接触や飛沫感染などによって容易に広がる傾向があります。
ウイルス性皮膚疾患の中には自然に治癒するものもありますが、長期間症状が持続したり、再発を繰り返したりするものもあります。また一部のウイルス性疾患は、適切な治療を行わないと重症化したり、合併症を引き起こしたりする可能性があります。
代表的なウイルス性皮膚疾患には、尋常性疣贅(いぼ)、尖圭コンジローマ、伝染性軟属腫(水いぼ)、帯状疱疹などがあります。これらの疾患は、それぞれ異なるウイルスによって引き起こされ、症状や感染経路も様々です。
ウイルス性疾患の多くは、適切な診断と治療により症状の改善や再発の予防が可能です。しかしウイルスの種類や感染の状態によっては、完全な治癒が難しい場合もあります。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要となります。
ウイルス性疾患の種類・原因
尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)
尋常性疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされるウイルス性のいぼです。主に手や足に現れますが、体のどの部分にも発生する可能性があります。皮膚の表面に小さな隆起として現れ、表面がざらざらしていることが特徴です。時間とともに大きくなったり、数が増えたりすることがあります。
感染は主に直接接触によって起こり、皮膚の小さな傷や擦り傷から侵入します。プールや公共の浴場などの湿った環境でも感染リスクが高まります。また、自分の体の別の部位に広がることもあります。免疫力が低下している場合や、皮膚が濡れて柔らかくなっている状態では感染しやすくなります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、主に性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)の特定の型が原因で発症します。主に性器や肛門周囲に発生し、小さなイボ状または鶏冠状の隆起性病変として現れます。時間とともに数が増えたり、大きくなったりすることがあります。
感染は主に性的接触によって起こりますが、感染した母親から出産時に新生児に感染することもあります。湿った環境や摩擦のある部位で発症しやすく、免疫力が低下している場合にはより発症リスクが高まります。また一部のHPVの型は子宮頸がんのリスク因子となることが知られており、定期的な検診が重要です。
伝染性軟属腫(水いぼ)
伝染性軟属腫は、ポックスウイルス科のモルスクムウイルスによって引き起こされる皮膚感染症です。主に小児に多く見られますが、成人でも発症することがあります。小さな光沢のある丸い隆起として現れ、中心部がへこんでいるのが特徴です。通常は無症状ですが、かゆみを伴うこともあります。
感染は主に直接接触によって起こり、皮膚同士の接触や感染した物品(タオルなど)を介して広がります。また、掻いたり擦ったりすることで自分の体の別の部位に広がることもあります。温水プールや公共の浴場などの湿った環境でも感染リスクが高まります。免疫力が低下している場合には、症状が重症化したり、広範囲に広がったりすることがあります。
帯状疱疹
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる皮膚疾患です。過去に水痘(水ぼうそう)に罹患したことのある人の体内に潜伏していたウイルスが、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めることで発症します。片側の体幹や顔面に沿って、痛みを伴う発疹や水疱が帯状に現れるのが特徴です。
発症の主な原因は、加齢やストレス、疲労、免疫力の低下などです。特に50歳以上の高齢者や、がん治療中の方、HIV感染者などの免疫不全状態にある人は発症リスクが高くなります。また、物理的な刺激や外傷がきっかけとなることもあります。帯状疱疹は他人への感染力はありませんが、水痘に罹患したことのない人が接触すると、水痘を発症する可能性があります。
こんな症状でお困りではありませんか?
・手や足に小さな隆起があり、表面がざらざらしている
・性器や肛門周囲に小さないぼ状の隆起がある
・体のどこかに小さな、光沢のある丸い隆起がある
・体の片側に沿って痛みを伴う発疹や水疱が現れた
・皮膚の隆起が徐々に大きくなったり、数が増えたりしている
・皮膚の隆起部分にかゆみや痛みがある
・水いぼのまわりが赤くなったり、炎症を起こしたりしている
・帯状疱疹の痛みが治った後も痛みが続いている(帯状疱疹後神経痛)
・ウイルス性の皮膚病変が治りにくく、再発を繰り返している
・免疫力の低下に伴い、ウイルス性皮膚疾患が悪化している
など
このような症状でお困りでしたら、西宮市の甲子園駅前おおした皮フ科クリニックへご相談ください。
ウイルス性疾患の検査方法
視診・触診
医師が患部を詳細に観察し、病変の形状、大きさ、色、分布などを確認します。また、触診によって病変の硬さや痛みの有無などを評価します。多くのウイルス性皮膚疾患は、特徴的な外観を持つため、視診だけでも高い確率で診断が可能です。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピーは、皮膚を拡大して観察する特殊な機器を用いた検査方法です。肉眼では見えない微細な病変の特徴を観察することができ、特に尋常性疣贅や伝染性軟属腫の診断に有用です。
皮膚生検
診断が難しい場合や、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。局所麻酔を行った後、病変の一部を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。
ウイルス検査
特定のウイルスの存在を確認するために、以下のような検査を行うことがあります。
PCR検査
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、ウイルスの遺伝子を検出します。高感度で特異的な検査方法であり、ヒトパピローマウイルス(HPV)や帯状疱疹ウイルスの検出に用いられます。
ウイルス抗原検査
ウイルスの特定のタンパク質(抗原)を検出する検査です。迅速に結果が得られるため、緊急性の高い場合に有用です。
血清学的検査
血液中のウイルスに対する抗体を検出する検査です。過去の感染歴や現在の感染状態を確認するのに役立ちます。特に帯状疱疹の診断に用いられることがあります。
チャンク試験
伝染性軟属腫の診断に用いられる簡便な検査方法です。病変を圧迫すると、中心から白い粥状の内容物が押し出されるのが特徴です。
ツァンク試験
帯状疱疹の診断に用いられる検査方法です。水疱の底部から採取した細胞を顕微鏡で観察し、特徴的な多核巨細胞の有無を確認します。
ウイルス性疾患の治療方法
ウイルス性疾患の治療方法は、原因となるウイルスの種類や症状の程度によって異なります。当院では、患者様の状態を詳しく診察し、最適な治療方法をご提案いたします。
尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)の治療
冷凍凝固療法
液体窒素を用いて病変部を凍結させる方法です。比較的痛みが少なく、効果的な治療方法として広く用いられています。
電気焼灼術
電気メスを用いて病変部を焼き切る方法です。深い病変や大きな病変に対して効果的です。
外用薬療法
症例によっては、ベセルナクリーム(一般名:イミキモド)などの外用薬を用いて治療します。ご自宅で継続的に使用することができます。
尖圭コンジローマの治療
外科的切除
病変を手術で切除する方法です。広範囲の病変や再発を繰り返す場合に選択されることがあります。
電気焼灼術
電気メスを用いて病変を焼き切ります。比較的大きな病変に対して効果的です。
外用薬療法
ベセルナクリーム(一般名:イミキモド)などの外用薬を用いて治療します。ご自宅で継続的に使用することができます。
伝染性軟属腫(水いぼ)の治療
用手圧出法
ピンセットなどを用いて病変の内容物を絞り出す方法です。簡便で即時的な効果が得られますが、再発の可能性があります。
冷凍凝固療法
液体窒素を用いて病変部を凍結させる方法です。痛みが少なく、小児にも適しています。
電気焼灼術
電気メスを用いて病変を焼き切ります。確実な治療方法ですが、痛みを伴う可能性があります。
外用薬療法
サリチル酸ワセリン(一般名:サリチル酸)、症例によっては、ベセルナクリーム(一般名:イミキモド)などの外用薬を用いて治療します。ご自宅で継続的に使用することができます。特に広範囲の病変や再発を繰り返す場合に有効です。
当院では、水いぼの治療薬、銀イオン配合クリーム(M‐BFクリーム)も取り扱っております。(保険適用外)
帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬
アシクロビル、バルトレックス(一般名:バラシクロビル)、ファムビル(一般名:ファムシクロビル)、アメナリーフ(一般名:アメナメビル)などの抗ウイルス薬を内服で投与します。早期に治療を開始することで、症状の軽減や合併症の予防が期待できます。
鎮痛薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)や カロナール(一般名:アセトアミノフェン)、ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兔炎症皮膚抽出液)、タリージェ(一般名:ミロガバリンべシル酸塩)、リリカ(プレガバリン)などの鎮痛薬を用いて、痛みの軽減をはかります。
外用薬
アズノール(一般名:アズレン)、抗ウイルス軟膏であるアラセナ軟膏(一般名:ビダラビン)などで皮膚症状の緩和をはかります。