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痒疹について
痒疹(ようしん)は、強いかゆみを伴う慢性の皮膚疾患の総称です。主な特徴として、皮膚に小さな丘疹(隆起した発疹)が多数現れ、激しいかゆみを伴います。痒疹は、その症状や発症部位によって様々な種類に分類されますが、いずれも共通して強いかゆみが特徴的です。
痒疹の正確な発症メカニズムは完全には解明されていませんが、アレルギー反応や免疫系の異常、神経系の過敏反応などが関与していると考えられています。また、ストレスや環境因子、全身疾患なども痒疹の発症や悪化に関与する可能性があります。
痒疹は、年齢や性別を問わず発症する可能性がありますが、一部の種類では特定の年齢層や性別に多く見られる傾向があります。例えば、結節性痒疹は中高年の女性に多く、小児ストロフルスは主に小児に見られます。
痒疹は生命を脅かす疾患ではありませんが、強いかゆみによって日常生活に大きな支障をきたすことがあります。また、掻破による二次感染や色素沈着、瘢痕形成などの合併症のリスクもあります。
適切な治療を行うことで症状の改善は可能ですが、完治が難しく再発しやすい傾向があります。そのため、症状のコントロールと再発予防のための長期的な管理が重要となります。
痒疹の種類・原因
結節性痒疹
結節性痒疹は、主に下肢や臀部に硬い結節状の丘疹が多発する慢性の痒疹です。結節は通常5~20mm大で、表面は平滑または鱗屑を伴います。激しいかゆみを伴い、掻破により症状が悪化することが特徴です。中高年の女性に多く見られ、ストレスや乾燥、内分泌異常などが発症や悪化の要因として考えられています。また、アトピー素因を持つ方に多い傾向があります。
多型慢性痒疹
多型慢性痒疹は、全身に様々な形態の丘疹や小結節が多発する慢性の痒疹です。丘疹の大きさや形状は多様で、色調も淡い紅色から褐色まで様々です。激しいかゆみを伴い、長期間持続することが特徴です。原因は不明ですが、アトピー素因や自己免疫疾患、悪性腫瘍などとの関連が指摘されています。また、ストレスや環境因子も症状の悪化に関与する可能性があります。
妊娠性痒疹
妊娠性痒疹は、妊娠中または産褥期に発症する痒疹の一種です。主に腹部、大腿、臀部などに小さな丘疹や丘疹性蕁麻疹が多発し、強いかゆみを伴います。妊娠後期に発症することが多く、出産後に自然軽快することが一般的です。原因として、妊娠中のホルモンバランスの変化や免疫系の変動が関与していると考えられています。
色素性痒疹
色素性痒疹は、主に下肢に褐色の色素沈着を伴う小さな丘疹が多発する慢性の痒疹です。かゆみを伴いますが、他の痒疹と比較すると比較的軽度です。原因は不明ですが、静脈うっ血や慢性の掻破刺激などが関与している可能性があります。中高年の女性に多く見られ、長期間持続する傾向があります。
小児ストロフルス
小児ストロフルスは、主に2~10歳の小児に見られる痒疹の一種です。体幹や四肢に小さな丘疹や水疱が多発し、強いかゆみを伴います。虫刺症に似た症状を呈することから、「虫刺様アレルギー」とも呼ばれます。原因として、食物アレルギーや虫刺、ウイルス感染などが関与していると考えられていますが、明確な原因が特定できないことも多いです。季節性があり、春から夏にかけて発症や悪化が見られることが特徴です。
こんな症状でお困りではありませんか?
・皮膚に小さな盛り上がり(丘疹)が多数現れている
・激しいかゆみがあり、夜も眠れない
・かゆみのために掻きむしってしまい、皮膚が傷ついている
・症状が長期間(数ヶ月以上)続いている
・かゆみが強く、日常生活に支障がある
・丘疹が徐々に大きくなったり、硬くなったりしている
・掻いた後に色素沈着が残る
・症状が季節によって悪化する
・妊娠中や出産後に急にかゆみが出現した
・子供の体に虫刺されのような発疹が繰り返し現れる
など
このような症状でお困りでしたら、西宮市の甲子園駅前おおした皮フ科クリニックへご相談ください。
痒疹の検査方法
痒疹の診断は、主に症状の観察と以下のような検査方法を組み合わせて行います。当院では、患者様の症状や状態に応じて適切な検査を選択し、正確な診断に努めています。
視診と触診
医師が患部を詳細に観察し、丘疹の形状、大きさ、分布、色調などを確認します。また、触診によって皮膚の状態(硬さ、温度など)を評価します。
問診
発症時期、経過、かゆみの程度、悪化因子、既往歴、家族歴などについて詳しくお聞きします。これにより、痒疹の種類や原因の推定、他の疾患との鑑別が可能になります。
皮膚生検
診断が難しい場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。局所麻酔を行った後、小さな皮膚片を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。これにより、痒疹に特徴的な組織像(表皮の肥厚、真皮上層の浮腫、炎症細胞浸潤など)を確認することができます。
血液検査
全身状態の評価や他の疾患との鑑別のために、以下のような血液検査を行うことがあります。
●一般血液検査:貧血や炎症の有無を確認します
●肝機能検査・腎機能検査:内臓疾患の有無を確認します
●甲状腺機能検査:甲状腺機能異常が痒疹の原因となることがあるため、確認します
●IgE抗体検査:アレルギー素因の有無を確認します
●自己抗体検査:自己免疫疾患との関連を確認します
など
アレルギー検査
痒疹の一部はアレルギー反応と関連している可能性があるため、以下のようなアレルギー検査を行うことがあります。
●特異的IgE抗体検査:特定のアレルゲンに対するIgE抗体を測定します
●パッチテスト:皮膚に直接アレルゲンを貼付し、遅延型アレルギー反応を確認します(連携施設に紹介します)
●プリックテスト:皮膚に軽く傷をつけてアレルゲンを滴下し、即時型アレルギー反応を確認します(連携施設に紹介します)
薬物療法
外用薬
●ステロイド外用薬:デルモベート軟膏、アンテベート軟膏、リンデロンVG軟膏、リドメックス軟膏、ドレニゾンテープなど。炎症を抑制し、かゆみを軽減します。症状の程度に応じて、適切な強さのステロイド薬を選択します
●プロトピック(一般名:タクロリムス軟膏)、コレクチム軟膏(一般名:デルゴシチニブ)、モイゼルト軟膏(一般名:ジファミラスト):非ステロイド性の免疫調整薬で、ステロイドの代替として使用されることがあります
●抗ヒスタミン外用薬:かゆみを軽減します
内服薬
●抗ヒスタミン薬:アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)、アレジオン(一般名:エピナスチン塩酸塩)、アレロック(一般名:オロパタジン)、ザイザル(一般名:レボセチリジン)、タリオン(一般名:ベポタスチンベシル酸塩)、デザレックス(一般名:デスロラタジン)、ビラノア(一般名:ビラスチン)、ルパフィン(一般名:ルパタジンフマル酸) などかゆみを軽減します。眠気の少ない新世代の抗ヒスタミン薬も使用可能です
●抗アレルギー薬:アレルギー反応を抑制し、かゆみや炎症を軽減します
●ステロイド内服薬:重症例や広範囲の症状に対して、短期間使用することがあります
●抗生物質:ルリッド(一般名:ロキシスロマイシン)などマクロライド系抗菌薬は抗炎症作用や免疫調整作用があり、使用することがあります
保湿療法
皮膚の乾燥はかゆみを悪化させるため、適切な保湿剤の使用が重要です。ヘパリン含有保湿剤や尿素やセラミドを含む保湿剤を定期的に使用することで、皮膚のバリア機能を改善し、かゆみの軽減をはかります。
紫外線療法
紫外線療法(エキシマライト)が有効です。
生物学的製剤
難治な結節性痒疹の方はデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が使用できます。