マラセチア

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マラセチアについて

マラセチアは、ヒトの皮膚に常在する真菌(カビ)の一種です。通常は無害ですが、環境の変化や体調の変化によって過剰に増殖し、様々な皮膚トラブルを引き起こすことがあります。
マラセチアは脂質を好んで生息するため、特に皮脂の分泌が多い部位(頭皮、顔、胸、背中など)に多く見られます。年齢や性別を問わず誰にでも存在しますが、思春期以降の若年層や成人に関連する皮膚疾患が多く見られます。
マラセチアが関与する主な皮膚疾患には、マラセチア毛包炎、癜風(でんぷう)、脂漏性皮膚炎などがあります。これらの疾患は、見た目の問題だけでなく、かゆみや不快感を伴うことも多く、患者様のQOL(生活の質)に大きな影響を与える可能性があります。
マラセチア関連疾患の多くは慢性的な経過をたどり、完治が難しいケースもありますが、適切な治療と日常的なケアにより、症状のコントロールが可能です。

マラセチアの種類・原因

マラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎は、毛包(毛穴)にマラセチアが過剰に増殖することで引き起こされる炎症性の皮膚疾患です。主に胸部や背部、上腕などに発症しますが、顔面に生じることもあります。
症状としては、毛穴を中心に小さな赤い丘疹や膿疱が現れます。かゆみを伴うこともあり、掻くことで症状が悪化したり、他の部位に広がったりすることがあります。
マラセチア毛包炎の主な原因には以下のようなものがあります。

●高温多湿な環境:汗をかきやすい環境や、湿気の多い気候はマラセチアの増殖を促進します
●過度の発汗:運動後や入浴後に長時間濡れた状態が続くと、マラセチアが増殖しやすくなります
●免疫力の低下:ストレスや疲労、基礎疾患などによる免疫力の低下は、マラセチアの過剰増殖を招きやすくなります
●不適切なスキンケア:過度の洗浄や、油分の多い化粧品の使用は、皮膚の環境を乱し、マラセチアの増殖を促進することがあります

癜風

癜風(でんぷう)は、マラセチアの一種である「マラセチア・グロボーサ」が原因で引き起こされる色素脱失性の皮膚疾患です。主に胸部、背部、上腕、首などに発症しますが、顔面に生じることもあります。
症状としては、境界明瞭な淡い褐色や白色の斑点が現れます。これらの斑点は徐々に拡大し、融合することがあります。通常はかゆみを伴わず、症状に気づかないまま進行することもあります。
癜風の主な原因には以下のようなものがあります。

●高温多湿な環境:マラセチアの増殖を促進する環境が、癜風の発症リスクを高めます
●遺伝的要因:家族性に発症する傾向が見られることから、遺伝的な要因も関与していると考えられています
●ホルモンバランスの変化:思春期や妊娠期など、ホルモンバランスが変化する時期に発症しやすい傾向があります
●栄養状態:ビタミンやミネラルの不足が、癜風の発症に関与している可能性が指摘されています

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、マラセチアの一種である「マラセチア・レストリクタ」や「マラセチア・グロボーサ」が関与して引き起こされる慢性の炎症性皮膚疾患です。主に頭皮、眉間、鼻周囲、耳の後ろ、胸の中心部などの脂腺の発達した部位に発症します。
症状としては、赤みを伴う皮疹や、黄色がかった油性の鱗屑(フケのようなもの)が特徴的です。かゆみを伴うことも多く、慢性的に経過する傾向があります。
脂漏性皮膚炎の主な原因には以下のようなものがあります。

●皮脂分泌の増加:ホルモンバランスの変化や遺伝的要因による過剰な皮脂分泌が、マラセチアの増殖を促進します
●免疫反応の異常:マラセチアに対する過剰な免疫反応が、炎症を引き起こすと考えられています
●ストレス:精神的なストレスは症状を悪化させる要因の1つです
●気候の変化:寒冷や乾燥など、気候の変化も症状に影響を与えることがあります

こんな症状でお困りではありませんか?

・胸や背中に小さな赤い発疹や膿疱ができている
・体幹部や腕に白っぽい斑点がある
・頭皮や顔にかさぶたのようなフケがある
・顔や胸の皮膚がべたつく、油っぽい
・皮膚のかゆみが気になる
・発疹や斑点が徐々に広がっている
・季節や環境の変化で症状が悪化する
・シャンプーやボディソープを変えても症状が改善しない
・汗をかいた後に症状が悪化する
・長期間症状が続いている
など

このような症状でお困りでしたら、西宮市の甲子園駅前おおした皮フ科クリニックへご相談ください。

マラセチアの検査方法

マラセチア関連疾患の診断は、主に症状の観察と以下のような検査方法を組み合わせて行います。当院では、患者様の症状や状態に応じて適切な検査を選択し、正確な診断に努めています。

視診と触診

医師が患部を詳細に観察し、発疹や斑点の形状、分布、色などを確認します。また、触診によって皮膚の状態(乾燥、油分など)を評価します。

ウッド灯検査

癜風の診断に特に有用な検査方法です。暗室でウッド灯(紫外線ランプ)を当てると、マラセチアが存在する部位が黄色や黄緑色の蛍光を発します。これにより、肉眼では判別しにくい病変の範囲を確認することができます。

KOH直接鏡検

患部から採取した鱗屑や毛髪を水酸化カリウム(KOH)溶液で処理し、顕微鏡で観察します。マラセチアの菌体や胞子を直接確認することができます。

テープストリッピング法

透明な粘着テープを患部に貼り付けて剥がし、皮膚表面の角質やマラセチアを採取します。これを染色して顕微鏡で観察することで、マラセチアの存在を確認します。

培養検査

患部から採取した検体を特殊な培地で培養し、マラセチアの増殖を確認します。また、薬剤感受性試験を行うことで、最適な治療薬の選択に役立てることができます。

皮膚生検

診断が難しい場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。局所麻酔を行った後、小さな皮膚片を採取し、病理学的に観察します。

パッチテスト

脂漏性皮膚炎の場合、アレルギー性接触皮膚炎との鑑別のために、連携施設に紹介しパッチテストを行うことがあります。

血液検査

全身状態の評価や他の疾患との鑑別のために、一般的な血液検査を行うことがあります。特に、免疫機能や栄養状態の評価に役立ちます。

マラセチアの治療方法

マラセチア関連疾患の治療方法は、疾患の種類や症状の程度によって異なります。当院では、患者様の状態を詳しく診察し、最適な治療方法をご提案いたします。

薬物療法

抗真菌薬

マラセチアの増殖を抑制するために、抗真菌薬を使用します。外用薬と内服薬があり、症状に応じて選択します。

●外用抗真菌薬:ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)、ルリコン(一般名:ルリコナゾール)などのクリームや軟膏を使用します
●内服抗真菌薬:イトリゾール(イトラコナゾール)、ラミシール(一般名:テルビナフィン塩酸塩)などを使用します。重症例や広範囲の病変に対して考慮されます

ステロイド外用薬

炎症を抑制し、かゆみを軽減するために、アンテベートローション、リンデロンVGローション、リドメックスローションなどステロイド外用薬を使用することがあります。ただし、長期使用による副作用に注意が必要です。

カルシニューリン阻害薬

プロトピック軟膏(一般名:タクロリムス)などのカルシニューリン阻害薬は、特に脂漏性皮膚炎の治療に有効です。ステロイド外用薬と比べて長期使用時の副作用が少ないという利点があります。

シャンプー療法

脂漏性皮膚炎や癜風の治療には、抗真菌作用のあるシャンプーを使用します。ケトコナゾールやジンクピリチオンを含むシャンプーが代表的です。ステロイドであるコムクロシャンプー(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)も有用であり、アトピー性皮膚炎をもつ当院院長も週に数回使用しています。

紫外線療法(エキシマライト)

癜風や脂漏性皮膚炎の治療には、紫外線療法(エキシマライト)が効果的な場合があります。

保湿療法

皮膚のバリア機能を改善し、マラセチアの増殖を抑制するために、適切な保湿剤の使用が重要です。

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