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多形紅斑について
多形紅斑は、皮膚に現れる急性の炎症性疾患です。その名前の通り、様々な形態(多型)の紅い発疹(紅斑)が特徴的です。主に若い世代に多く見られますが、年齢を問わず発症する可能性があります。
多形紅斑の特徴的な症状は、標的状(ターゲット状)の紅斑です。これは中心部が暗赤色や紫色で、その周囲に淡い紅色の輪が取り巻く形態を示します。この発疹は主に四肢や体幹に対称的に現れ、しばしば掌や足底にも見られます。
多形紅斑は通常、2~4週間程度で自然に軽快することが多い疾患です。しかし、症状が重度の場合や、繰り返し再発する場合もあります。また、粘膜(口腔内や性器など)にも症状が現れることがあり、このような場合は「スティーブンス・ジョンソン症候群」という重症型に移行する可能性があるため、注意が必要です。
多形紅斑の原因は様々ですが、多くの場合、感染症やアレルギー反応、薬剤反応などが引き金となって発症すると考えられています。正確な診断と適切な治療、そして再発予防が重要となります。
多形紅斑の原因
多形紅斑の正確な発症メカニズムは完全には解明されていませんが、以下のような要因が原因として考えられています。
感染症
多形紅斑の最も一般的な原因とされているのが感染症です。特に以下のような病原体による感染が多形紅斑の発症と関連していると考えられています。
●ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)
●マイコプラズマ
●クラミジア
●ストレプトコッカス(連鎖球菌)
●エプスタイン・バールウイルス(EBウイルス)
など
これらの感染症に対する免疫反応が、皮膚に炎症を引き起こすと考えられています。
薬剤反応
様々な薬剤が多形紅斑の原因となる可能性があります。特に以下のような薬剤との関連が報告されています。
●抗生物質(ペニシリン系、セフェム系など)
●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
●抗てんかん薬
●サルファ剤
など
これらの薬剤に対するアレルギー反応や過敏反応が、多形紅斑の発症に繋がると考えられています。
アレルギー反応
特定の食物や化学物質、環境因子に対するアレルギー反応が多形紅斑を引き起こすことがあります。これは、体の免疫系が過剰に反応することで皮膚に炎症が生じるためです。
自己免疫疾患
全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患に伴って多形紅斑が発症することがあります。これらの疾患では、体の免疫系が誤って自身の組織を攻撃し、その結果として皮膚に炎症が生じると考えられています。
放射線照射
放射線療法を受けている患者様に多形紅斑が発症することがあります。放射線による組織へのダメージが免疫反応を引き起こし、結果として多形紅斑が生じる可能性があります。
妊娠
妊娠中のホルモンバランスの変化が多形紅斑の発症と関連している可能性が指摘されています。
原因不明(特発性)
上記のような明確な原因が特定できない場合もあります。このような場合を特発性多形紅斑と言います。
こんな症状でお困りではありませんか?
・手足や体幹に標的状(ターゲット状)の赤い発疹ができている
・発疹が対称的に現れている
・発疹の中心が暗赤色や紫色で、周囲が淡い紅色をしている
・発疹にかゆみや軽い痛みを感じる
・口の中や性器にも痛みを伴う発疹ができている
・発疹が徐々に広がっている
・発熱や倦怠感など、全身症状を伴っている
・発疹が繰り返し現れる
・最近、新しい薬を飲み始めた後に発疹が現れた
・発疹が2週間以上続いている
など
このような症状でお困りでしたら、西宮市の甲子園駅前おおした皮フ科クリニックへご相談ください。
多形紅斑の検査方法
多形紅斑の診断は、主に症状の観察と以下のような検査方法を組み合わせて行います。当院では、患者様の症状や状態に応じて適切な検査を選択し、正確な診断に努めています。
視診と問診
医師が発疹の状態を直接観察し、その形態、分布、色調などを確認します。また、症状の経過、最近の感染症の有無、服用中の薬剤、アレルギー歴などについて詳しくお聞きします。
血液検査
●一般血液検査:炎症の程度や全身状態を評価します
●抗体検査:関連する感染症(ヘルペスウイルスなど)の有無を確認します
●自己抗体検査:自己免疫疾患の可能性を評価します
皮膚生検
診断が困難な場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。局所麻酔を行った後、小さな皮膚片を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。多形紅斑に特徴的な組織像を確認することで、確定診断に繋がります。
パッチテスト
薬剤や化学物質によるアレルギー反応が疑われる場合、パッチテストを行うことがあります。原因と思われる物質を皮膚に貼付し、アレルギー反応の有無を確認します。 パッチテストが必要な場合は、連携施設に紹介します。
多形紅斑の治療方法
多形紅斑の治療方法は、症状の程度や原因、患者様の全身状態などによって選択されます。多くの場合、対症療法が中心となりますが、原因の除去や再発予防も重要です。当院では、患者様の状態や希望に応じて、以下のような治療法をご提案しています。
対症療法
外用ステロイド薬
炎症を抑制し、かゆみや痛みを軽減するために、アンテベート軟膏、リンデロンVG軟膏、リドメックス軟膏などのステロイド外用薬を使用します。症状の程度に応じて、適切な強さのステロイド薬を選択します。
抗ヒスタミン薬
かゆみが強い場合、アレグラ(フェキソフェナジン)などの抗ヒスタミン薬の内服を行います。眠気の少ない新世代の抗ヒスタミン薬も使用可能です。
保湿剤
皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を改善するために、適切な保湿剤の使用が重要です。
原因治療
感染症治療
感染症が原因と考えられる場合、適切な抗生物質や抗ウイルス薬を使用します。特に再発性多形紅斑では、ヘルペスウイルスの予防的治療が有効なことがあります。
薬剤の中止・変更
薬剤が原因と考えられる場合、可能な限りその薬剤の使用を中止または変更します。ただし、重要な薬剤の場合は慎重に検討した上で判断いたします。